2024年6月13日(木):例会

「能と現代」

能楽師 観世流シテ方
重要無形文化財能楽総合認定保持者
公益社団法人能楽協会京都支部支部長
公益社団法人京都観世会理事
同志社大学客員教授
河村 晴久 様

本日の卓話は、能楽師の河村晴久様にご講演頂きました。初めに高砂の一節を迫力満点のお声でご朗読賜りました。能とは、祝福、祈り、鎮魂の芸能であり、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。能の始まりは、宗教性と娯楽性を兼ね備えた庶民芸能であった散楽・猿楽にあります。その後、散楽・猿楽において活躍していた観阿弥・世阿弥が、足利義満の目に留まり、演目も大衆の娯楽性を表したものから、人の根源的な感情を表した崇高なものへと変化していき、今の能楽となっていきます。能楽の本質は、日本文化の基盤であり、現在まで続く継続性であり、継続するための伝統と革新であり、いつの時代においても受け入れられる同時代性にあります。また、観阿弥・世阿弥の能には戦争の愚かさや虚しさを表した反戦への思いが強く表れており、その一例として「屋島」の一節を歌と舞を含めてご披露くださいました。能も含めて自国の文化を知ることは、自己同一性の確立や自己肯定につながり、他国の異文化や異なる考え方に接した際に互いに尊敬をもって相対することができるため、世界平和にもつながっていくことをお話頂きました。河村様、早朝から貴重なご講演を賜りまして誠にありがとうございました。